母娘関係の難しさー『私は私。母は母。』
『私は私。母は母。ーあなたを苦しめる母親から自由になる本』加藤伊都子
娘をジェンダー格差社会(男性中心社会)に適応させようとする母親の行為が、娘の自尊心を傷つけ、自分らしく生きたいと願う娘の足を引っ張る。これが母娘葛藤の本質である。
母親との関係に悩みを抱える女性がいます。
子どもの頃から愛されていないと感じたり、思春期を過ぎた頃からうまくいかなかったり、就職・結婚・子育てで価値観の相違を抱えたり、母親が年老いてきて悩むようになったり、と悩み出すタイミングは人それぞれですが、案外多い気はしています。
育ててもらった恩は感じている。でも……という、モヤモヤとした気持ちを抱えることは悪いことではありません。
母親とは、別の時代を生きている、別の個性をもった人間なのですから、うまくいかないことだってあります。
母親との関係に悩む女性のための本は数多くありますが、本書のよさは、社会的な面から母親の行動を説明している点にあると思います。
例えば、
母親にほめられたことがない、という女性は多いが、これはこの社会に娘を適応されるためのジェンダー教育の1つ
(注.陰で夫や子どもを支える、ケアする、自分のことはひたすらに我慢する女性を社会が求めているから、母親は娘をほめない。ということ)
娘の、男兄弟と差をつけられたという抗議に対して、差なんかつけてないと答える母親がいるが、これは母親が嘘をついているのではない。娘と息子に対する対応の差が、何かを意図してそうなるのではなく、自然にそうなってしまうようなものであるために、母親自身がそのことに無自覚なのである。
↑これはすごく納得でした。
意識してる、わざとやってるんじゃなくて、生きてきた社会の慣習に染まりすぎて、無自覚に娘を傷つけているのだと。
つまり、母親という個人だけに責任があるのではなく、その背景にある社会も作用して、母娘関係がうまくいかない、話(認識)が噛み合わないのです。
こういう母親といるのが苦しいのであれば、兎にも角にも、距離をおくこと。そして、母親から、自分が求めるような愛をもらうことを断念し、逆に自分も母親に(与えてもよいと素直に思えること以上のものは)与えないこと(恩知らずになること)
がアドバイスされています。
実際にこのようにする必要があるほど親との関係が険悪でなくても、親との関係を見つめ直すことは、自分の人生を健全に生きるうえで、非常に有用なのではないかと思います。
娘をもつ母親へのアドバイスもあり(子どもがいない人も、是非読んだ方がよい内容です)、幅広い世代の女性にオススメできる本だと思います。
全部読んだわたしから、読むうえでのアドバイスを挙げるとすると以下の通りです。
- 序文(最初の挨拶、どんな活動してきたか)が長々しいので、飛ばしてもok
- 事例が多いのですが、飛ばして先に本文を読み、気になる事例にだけ戻ってもよいかと。結構悲しくなる事例もあるので。
- 心理学的な解説がありますが、全部わからなくても良いと思います。自分に刺さる言葉だけを探してもよいかと。
親、に限らず、自分の人生って何なんだろうと悩んでいる女性にとっても、有用な本だと思います。